第二部:パネルディスカッション
Webinarの第二部は、強い推奨の項目についてパネルディスカッション形式で開発専門家が各自の意見を述べた。
@ 家族中心のケア:家族に早産、低体重の新生児を育てる自信づけを行うために、生後早期から医療チームの一員として家族がケア全般に入ることが大切なポイントである。それから、退院後の家庭訪問やフォローアップも忘れてはならない。場合によって、地域のピアサポート、家族団体に紹介することも必要かもしれない。出生後早期からのskin-to-skinは母子の絆形成、そして24時間の母子同室は母乳分泌に非常に有益である。コロナ禍で母子、家族分離が続いている現実の中で、できるだけ家族分離を避け、児のケアに最大限家族に参加してもらうのが我々の大きな課題である。
A カンガルーマザーケア(K.M.C.):従来はさらに小さい(2kg未満の)早産児で行われるイメージだったが今後は2-2.5kgの健常な低出生体重児や、自家出産の児も含めて、母子関連病棟やコミュニティにいる全ての母子が推奨対象になる。さらに、出生直後から母のK.M.C.によって、母親が児のケアの主要メンバーになることが大切である。
B 可能な限り早期から、できたら生後1時間から自母乳もしくはドナーミルクにて栄養開始する。早産児の栄養の進め方としては、full-feedingのより早い達成を目指し、30ml/kg/dayの増量ペースは実は安全で許容可能である。すべての早産児により良い体重増加、新陳代謝と神経発達を図るべきである。
C 出生後呼吸障害を呈した児には最初から酸素投与するより、早期のCPAP装着が良い。地域病院においては呼吸障害による転院の母子分離を防ぐため、CPAPを備えるべきである。
D カフェインは経口投与、静脈内投与のいずれも可能であり利便性が高く、早産児無呼吸発作の治療、呼吸器からの離脱や再挿管の予防に非常に有用である一方、値段が高価であり、中/低所得の国においてはまだ十分浸透したとは言えない。今回のガイドラインがきっかけでカフェインがより入手しやすくなることを期待する。
第三部:今後レコメンデーションを遂行するため必要な行動
今後新しいレコメンデーションを全世界に遂行するため、WHOとUNICEFにとって必要な行動は:
@ 各地域の二次病院で通用できる導入ガイドの発行。
A 各施設において本レコメンデーションをスケールアップするために、エビデンスのある文献を見直し、標準的なインフラストラクチャー(例えば24時間面会可能にするための環境作りやスタッフ配置、CPAPの増備、カフェインの流通、感染対策チームの成立など)を構築することが必要である。
B 早産児医療の品質向上のため、医療スタッフ間の再教育の励行が重要である。
C 良好なレポートアンドフィードバックシステムの構築が望ましい。
D 世界中どこでも参加できる国際コンサルテーション会議の定期的な開催。
上記によって、この新しいレコメンデーションのカバー率を80%以上に上げたい。
結語
早産児/低出生体重児ケアのレコメンデーションの積極的な遂行によって、開発途上国だけではなく、先進国も含めて全世界にわたり、早産児医療に画期的な影響がもたらされ、脆弱な早産や低出生体重児の生存率や長期発達予後の改善に寄与することが期待される。